軟便・下痢のメカニズムや原因|乳酸菌などでの対処法、病院へ行くべき症状

通常の便よりも柔らかく、腹痛や吐き気など他の症状を伴うこともある軟便下痢

軟便や下痢を改善するためにセルフケアで対処可能なケースもあれば、病院での診察・治療が必要なケースもあります。

今回は、軟便・下痢が起こるメカニズムや原因、乳酸菌などによる予防・改善効果が期待できる方法、病院に行くべき症状について詳しく紹介します。

 

便はどのように作られる?

便の形成に大きく関わっているのが大腸です。

口から摂取した食べ物は食道から胃へ運ばれ、胃液や消化酵素によって細かくされた後、小腸へと送られます。

小腸では消化が行われながらビタミン、ミネラル、アミノ酸、糖質など大部分の栄養が吸収され、その残りが大腸に運ばれます。

大腸で行われるのはナトリウムやカリウムの吸収、食物繊維の消化などです。

 

その過程で内容物の水分が吸収されます。

内容物は水分を吸収されながら大腸を移動し、流動状→かゆ状→固形状へと変化して、最後に便となって肛門から排出されます。

口から摂取した食べ物が消化・吸収されて便になって排出されるまでの時間は、24〜72時間程度です。

 

どんな状態が軟便?

便は、摂取した食べ物の残りかすや腸内細菌、死んだ細胞、水分で形成されています。

通常の固形便の水分量は70〜80%で、水分量の変化によって硬さが変化します。

では、「軟便」とはどのような状態なのか確認してみましょう。 

 

水分量80%~90%なら軟便

軟便とは水分量が80%〜90%で、通常の固形便より軟らかい便を指します。

泥状便(でいじょうべん)」とも呼ばれ、ふわふわとしていてはっきりとした形がない状態が軟便です。

水分量が90%以上になると、下痢便とも呼ばれる液状の「水様便(すいようべん)」になります。

逆に水分量が70%以下の硬い状態になると便秘になりがちです。

 

理想的な排便は1日に1〜3回、150〜250g程度が目安です。

下痢・便秘の明確な定義はありませんが、泥状便または水様便を1日に何度も排便しているなら「下痢」、便が硬く3日以上排便がない場合は「便秘」の傾向があると考えられるでしょう。

 

ここで30代〜50代の女性を対象にした「あなたが気になっている胃腸症状はなんですか」というアンケートの結果を見てみましょう。

わかもと製薬アンケート調査(対象:30代~50代女性159人※ 複数回答あり

腸の不調に関する項目(グラフで赤く示した箇所)で比較すると、下痢・軟便を気にしている人は便秘の半分以下です。

胃関連の症状と比べても少ない方ですが、一定数の人が悩んでいることは確かです。

 

軟便・下痢になるメカニズムは主に3つ!原因は?

下痢は原因によって、分泌性下痢・浸透圧性下痢・運動亢進性下痢の3種類に分けられます。

同じ下痢症状でも、原因に合わせて対策をとらないと改善につながりません。

まずは、軟便・下痢を引き起こしている原因を把握するために、それぞれのメカニズムを確認してみましょう。

 

腸からの分泌液が過剰になる

細菌やウイルス感染による粘膜の炎症、アレルギーによる粘膜のむくみなど、腸の粘膜になんらかのダメージが加わると、腸から分泌される水分量が過剰になって下痢が起きます。

このタイプの下痢が「分泌性下痢」です。

また、腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じ、慢性的な下痢などを引き起こす「炎症性腸疾患」もあります

炎症性腸疾患の中でも特に発症頻度が高いのは、潰瘍性大腸炎とクローン病です。

 

腸で適度に水分吸収がされない

腸内に浸透圧(水分を取り込もうとする力)の高い成分があると、便の水分を吸収する腸の働きが妨げられてしまい下痢になります。

このタイプの下痢が「浸透圧性下痢」です。

たとえば、キシリトールなどの人工甘味料の一種である糖アルコールやマグネシウム含有製剤(下剤など)といった浸透圧の高い食品や薬の摂取が原因と言われています。

 

また、

  • 乳糖不耐症
  • 胃・腸の切除
  • 消化・吸収に関わる臓器の病気

などから、小腸の消化吸収機能が低下する「吸収不良症候群」を引き起こして下痢になることもあります。

ミルクに含まれる乳糖を分解する酵素の活性が低下しているために、乳糖を消化吸収できず、下痢や体重増加不良をきたす疾患。

 

腸が過剰に動く

腸内で形成された便は、腸のぜん動運動によって収縮と弛緩を繰り返しながら肛門から体外へ排出されます。

何らかの要因で腸のぜん動運動が過剰になると、大腸内の便は十分に水分を吸収されないまま肛門まで運ばれてしまうため、水分量の多い下痢が生じる原因となります。

このように、過剰なぜん動運動によって生じる下痢を「運動亢進性下痢」といいます。

主な原因はストレスや冷え、暴飲暴食、香辛料の効いた食べ物やコーヒーといった刺激物の摂取などです。

腸の動きは自律神経によってコントロールされているため、ストレスや生活習慣などの影響で自律神経のバランスが乱れてしまうと、腸のぜん道運動が過剰になってしまうのです。

 

腸内フローラの乱れも下痢の原因になる

下痢は、紹介してきたようにさまざまな原因によって生じますが、腸内フローラ(腸内細菌叢)の乱れが関係する場合もあります。

腸内フローラが乱れる原因は、加齢、栄養バランスの悪い食生活、睡眠不足、ストレスなどです。

腸内にはヒトにとって有益な働きをする善玉菌、有害(病気や食中毒など)な働きをする悪玉菌、健康なときは大人しく、体が弱っているときなどは悪い働きをする日和見菌が棲みついており、腸内フローラを形成しています。

 

  • 善玉菌:乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など
  • 悪玉菌:ウェルシュ菌・ブドウ球菌など
  • 日和見菌:バクテロイデス・連鎖球菌など

善玉菌のひとつである乳酸菌が産生した乳酸は、腸を刺激してぜん動運動を促します。

しかし、腸内フローラが乱れるとその刺激が過剰なものとなり、下痢を引き起こすことがあるのです。

また、善玉菌には病原菌を排除する働きがありますが、腸内フローラの乱れにより病原菌に対する攻撃力が低下してしまい、下痢を引き起こすこともあります。

その他にも腸内フローラが乱れると、人工甘味料や乳糖などを分解する善玉菌の機能が低下して消化不良に起因する下痢を引き起こす可能性もあります。

このように下痢は腸内フローラの乱れが原因のひとつであるため、腸内環境のバランスを整えることが大切です。

 

軟便や下痢を予防する方法・改善する対処法

軟便や下痢の症状が続くと、トイレに行く回数が増えるなど生活に支障が出ます。

そのような事態を避けるためには、正しい軟便・下痢対策を取ることが重要です。

ここでは、日常生活で実践できる軟便・下痢の予防方法、さらに症状の改善効果が期待できる対処法を7つ紹介します。

 

暴飲暴食、刺激物を避ける

暴飲暴食や刺激物の摂取は、腸の過剰なぜん動運動を招き、軟便・下痢を引き起こします。

刺激物には香辛料のほか、コーヒー、アルコール、炭酸飲料なども含まれます。

普段から食べすぎ・飲みすぎに注意して、刺激物の摂取を控えるようにしましょう。

 

軟便・下痢に効果的な消化に良い食べ物を食事で摂る

軟便・下痢のときは、消化に良い食事を摂りましょう。

消化に良い食べ物とは、脂質や食物繊維の少ないもの、柔らかく煮たものです。

 

【消化に良い料理・食材例】

米・麺類お粥・雑炊・温かいうどんなど
肉類蒸し鶏・鶏のみぞれ煮など

(ささみ・鶏ひき肉)

魚類白身魚の煮付け・はんぺんなど
たまご豆腐・温泉卵・茶碗蒸し・だし巻き卵など
大豆食品豆乳・湯豆腐・白和えなど
野菜類野菜スープ・蒸し野菜など

(かぶ・大根・白菜・キャベツ・人参・ブロッコリー・かぼちゃなど)

果物バナナ・桃の缶詰・フルーツゼリーなど

食事をする際は、よく噛むと食べ物が細かくなり、消化時の胃腸の負担を抑えられます。

一口の咀嚼回数は30回が目安です。

咀嚼回数が減りがちな「ながら食い」「早食い」は避けて、食事をゆっくりと楽しむようにしましょう。

 

ストレスを解消する

ストレスが溜まると軟便や下痢の原因となるため、日頃からストレスを解消して溜め込まないことが大切です。

ストレス解消には、以下のような方法があります。

  • ストレッチをして体をほぐす
  • 太陽の光を浴びながらウォーキングやサイクリングをする
  • 友人や恋人など親しい人と話す
  • たくさん笑う
  • 十分な睡眠時間を確保してよく眠る
  • 音楽鑑賞・カラオケ・スポーツ・旅行など好きな時間を楽しむ

仕事とプライベートの時間をしっかりと分けて、心身ともにリラックスする時間を作りましょう。

 

お腹を温める

お腹の冷えも軟便や下痢の原因になるため、日常的にお腹を温めるようにすれば、軟便・下痢予防にもつながります。

お腹の冷え対策には、以下のような方法があります。

  • カイロや腹巻でお腹を温める
  • 厚着をする
  • エアコンなどで部屋を暖める

慢性的な下痢症状で悩んでいる人は、温かい食べ物・飲み物で体を内側から温めるのも効果的です。

夏であっても冷たいものの食べ過ぎ・飲み過ぎは避けましょう。

 

下痢止め薬を飲む

下痢がつらいときは、市販の下痢止め薬を使って症状を抑える方法もあります。

下痢止め薬には、以下のような成分が配合されています。

  • 腸管運動抑制剤:腸のぜん動運動を抑える
  • 殺菌剤:腸内にとどまっている細菌を殺菌する
  • 収れん剤:膜を作って腸壁を保護する

体の冷えや食べ過ぎなどによる下痢には腸管運動抑制剤や収れん剤が配合されているもの、食あたりや水あたりによる下痢には殺菌剤が配合されているものを選ぶと、症状の改善が期待できます

下痢の原因や症状、体質によって適した下痢止め薬は違うため、市販の下痢止め薬を購入する際は薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

細菌やウイルスによる感染症、潰瘍性大腸炎などに伴う下痢であった場合は、体調の悪化など逆効果の可能性があるので、むやみに市販の下痢止め薬を使用せずに医療機関を受診しましょう。

 

乳酸菌を含む整腸剤で腸内環境を整える

軟便や下痢を改善するためには腸内環境を整えることが大切です。

お腹の調子が優れない時には、善玉菌である乳酸菌などを含む整腸剤を服用すると良いでしょう。

また、肉中心の食事になりがちな人は消化不良を起こしやすく、腸内に悪玉菌が増えてしまうため腸内環境が乱れがちです。

その場合は、消化酵素を含む整腸剤が効果的です。

 

下痢が続いて食欲が落ちているときや、消化に優しいもの中心の食事で栄養素が足りていないときには、アミノ酸やビタミン、ミネラルなどを含む整腸剤で栄養補給をするとよいでしょう。

整腸剤を選ぶときは、ご自身の状態に合わせて乳酸菌とその他の有効成分を含む商品を選ぶことをおすすめします。

 

こんな症状もあるなら病院へ

下痢の他に、以下のような症状がある場合は早めに病院で診察を受けましょう。

 

激しい腹痛や嘔吐、発熱

下痢と共に激しい腹痛や嘔吐、発熱の症状がある場合は、食中毒の可能性があります。

食中毒の原因になるのは、以下のような細菌・ウイルスなどです。

  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 腸炎ビブリオ
  • 病原性大腸菌
  • 赤痢菌
  • コレラ
  • ノロウイルス
  • 寄生虫

感染者から他の人に感染するものもあるため、疑いがある場合は早めに検査・治療を行いましょう

 

便が赤い・黒い

便が赤い・黒い場合は、便に血が混ざっている可能性があります。

血便が出る原因は、以下のようなものが考えられます。

  • 細菌感染
  • 大腸がん
  • 大腸ポリープ
  • 潰瘍性大腸炎
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍

上記は必ずしも下痢を伴うわけではありません。

下痢ではなくても便の色が赤かったり黒かったりする場合は、病院で診断を受けましょう

 

下痢と便秘を繰り返す

下痢と便秘を繰り返している場合、ストレス自律神経の乱れによる過敏性腸症候群の可能性があります。

過敏性腸症候群は下痢と便秘を繰り返す他にも、以下のような症状が現れやすいです。

  • 慢性的な腹部膨張感・腹痛
  • 頭痛
  • 吐き気
  • イライラ感
  • 不眠

 

また、下痢と便秘を繰り返す原因には、以下のような疾患も考えられます。

  • 大腸ポリープ
  • 大腸がん
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
  • 膵炎(すいえん)
  • 肝臓がん

 

体重が減少するような慢性的な下痢

下痢は約1週間以内に治るものは「急性下痢」、4週間以上続くものは「慢性下痢」に分けられます。

慢性的な下痢になると、食事量の減少や消化吸収機能の低下によって体重が減少することがあります。

また、慢性下痢と体重減少がある場合、

  • 吸収不良症候群
  • 過敏性腸症候群
  • クローン病
  • 直腸がん

などの疾患が原因の可能性もあるので注意しましょう。

 

まとめ

軟便や下痢の原因はさまざまですが、予防策として整腸ケアを行い、消化や栄養補給を意識した生活習慣を取り入れてみましょう。

腸内環境を整えることで、軟便や下痢が起きにくい体質に改善できるかもしれません。

ただし、下痢が繰り返される、下痢の他にも症状があるという場合は、早めに内科や消化器内科、胃腸科などの専門医師に相談しましょう。