お腹にガスが溜まるのはなぜ?お腹が張る原因や考えられる病気について解説!

お腹にガスが溜まると、苦しさや痛み、不快感などにより生活に支障をきたすことがあります。

今回は、お腹にガスが溜まる理由や原因、お腹にガスが溜まる場合に考えられる病気、ガス溜まりの解消方法について詳しく紹介します。

ガスが溜まってお腹の張りが気になっている人は、ぜひ参考にしてください。

 

お腹にガスが溜まるのはなぜ?

お腹にガスが溜まるのは、体内のガスの発生と排出のバランスが崩れているのが原因です。

お腹に溜まるガスは、主に口から飲み込んだ空気と腸内細菌が食べ物を分解するときに発生するガスからできています。

人は食べたり飲んだりしているときに、一緒に口から空気を飲み込んでいます。

飲み込んだ空気は腸に運ばれ、腸内細菌が食べ物を分解するときに発生するガスと混ざります。

体内のガスのほとんどは腸壁から血管に吸収されて肺から排出され、1割程度がゲップやオナラとして排出されます。

ガスの発生と排出のバランスが保たれていれば、お腹に過剰にガスが溜まることはありません。

 

しかし、何らかの理由でガスが多く発生したりうまく排出できなかったりすると、お腹にガスが溜まって、さまざまな不調につながりやすくなります。

お腹に多くのガスが溜まるとお腹の張りが強くなり、腹痛・食欲不振・息苦しさ・足のむくみといった症状が現れることがあります。

 

ガスが溜まってお腹が張る原因

ここでは、ガスが溜まることによりお腹が張る4つの原因を紹介します。

 

腸内環境の乱れ

ヒトの腸管、主に大腸には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌(腸内細菌叢(そう)や腸内フローラとよばれます)が生息しています。

ヒトの腸内細菌は、善玉の菌と悪玉の菌、そのどちらでもない中間の菌と、大きく分けて3グループで構成されています。

出典:腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)清水 純

善玉菌悪玉菌日和見菌
主な菌種・乳酸菌

・ビフィズス菌

・大腸菌(有毒株)

・ウェルシュ菌

・ブドウ球菌

・バクテロイデス

・大腸菌(無毒株)

・連鎖球菌

主な働き・悪玉菌の侵入や増殖を抑える

・腸のぜん動運動を促す

・有害物質を発生させる

・腸内の腐敗を促進させる

・善玉菌が多いときは大人しい

・悪玉菌が多いときは悪玉菌と同じ働きをする

腸内細菌の理想のバランスは、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」です。

善玉菌よりも悪玉菌が優位になると腸内環境が乱れ、便秘を始めとするお腹の不調を招きます。

便秘によって食べ物の残りが腸内にたまった状態が続くと、腸内細菌が分解を繰り返し、腸内にガスが溜まりやすくなります。

 

ちなみに、善玉菌は糖質や食物繊維を、悪玉菌は動物性たんぱく質や脂質をエサにして増殖し、栄養を分解するときにガスを発生させます。

善玉菌によって糖質や食物繊維が分解されるときに発生するガスは、メタンや水素、二酸化炭素といったほとんど無臭のガスです。

しかし、悪玉菌が動物性たんぱく質を分解するときは、硫化水素やスカトール、インドールといったニオイのあるガスが発生します。

そのため、オナラのニオイが臭いときは腸内環境の乱れが疑われます。

\オナラのニオイが気になる人はこちら/

 

腸内細菌のエサとなる栄養を摂りすぎることも、ガス溜まりの原因のひとつです。

とくに、肉類や脂質の食べ過ぎは悪玉菌を増やし、腸内環境の乱れを招くので注意しましょう。

 

\腸内環境を整える方法についてはこちら/

腸内環境を整えたい!効果のある食べ物や三種の菌とは?腸内環境改善のメリット

 

腸の働きの低下

腸の働き(ぜん動運動)が良好だと、ガスをスムーズに排出することができます。

しかし、腸のぜん動運動が低下すると、ガスをスムーズに排出することができず、お腹にガスが溜まりやすくなります

腸のぜん動運動は、自律神経によりコントロールされています。

 

自律神経とは、自分の意思とは関係なく、消化、呼吸、循環などの身体の機能をコントロールする神経です。

自律神経には、活動的になると優位になる「交感神経」とリラックスしている時に優位になる「副交感神経」の2つがあり、両者の神経がバランスをとりながら働いています。

腸のぜん動運動は、副交感神経が優位なときに活発になります。

ストレスや乱れた生活習慣、薬の副作用、特定の病気などの影響により交感神経が優位になると、腸のぜん動運動が低下します。

また、加齢や運動不足により筋力が低下している人や、女性ホルモンのバランスが乱れている女性も、腸のぜん動運動が低下してガスが溜まりやすくなります。

 

過剰に飲み込んだ空気

早食いの人や、炭酸飲料をよく飲む人は、飲み込む空気が多いためガスがお腹に溜まりやすくなります。

その他にも、無意識に空気をたくさん飲み込んでしまう「呑気症(どんきしょう)」の人は、お腹が張ったり、ゲップやオナラがよく出たりすることがあります。

なお、呑気症はストレスが関係しているといわれています。

緊張や不安から歯を噛み締めたり、唾を飲み込んだりすることが多くなることから、一緒に空気を飲み込んでしまい、ガスが溜まりやすくなります。

 

体質に合わない食べ物

ガス溜まりやお腹の張りに加えて、下痢、腹痛といった症状もある場合、「短鎖炭水化物(FODMAP)」を含む食品に過敏な体質の可能性があります。

FODMAPは、小腸内で消化吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称で、Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類)、and、Polyols(ポリオール)の頭文字から付けられたものです。

英語表記糖質の種類含まれる食品例
Oligosaccharidesオリゴ糖小麦

玉ねぎ

納豆

レンズ豆

ひよこ豆

Disaccharides二糖類乳製品

牛乳

ヨーグルト

Monosaccharides単糖類はちみつ

りんご

ドライフルーツ

Polyolsポリオール(ソルビトール、キシリトール)シュガーレス菓子

ガム

いちご

プルーン

マッシュルーム

小腸で吸収されなかったFODMAPは、直接大腸に運ばれていきます。

大腸に届いたFODMAPは腸内細菌のエサとなり、異常発酵を起こします。

これにより腸内にガスが発生しお腹が張りやすくなります。

 

FODMAPは、本来は腸内環境に良いものなので、意識的に摂取している人が多いです。

しかし、ガス溜まりや下痢、腹痛などの症状がある過敏性腸症候群(IBS)や小腸内細菌増殖症(SIBO)の人が高FODMAP食品を日常的に摂取すると、症状が悪化する可能性が高いといわれています。

IBSやSIBOについては、次の章で詳しく紹介します。

 

【症状別】お腹にガスが溜まる場合に考えられる病気・疾患

お腹にガスが溜まるのは、病気が関わっている可能性もあります。

ここでは、症状別に、お腹にガスが溜まる場合に考えられる病気・疾患を紹介します。

 

慢性胃炎

【症状】

  • お腹の張り
  • オナラの増加
  • 胃痛
  • 胃もたれ
  • 胃のむかつき
  • 胸焼け
  • 食欲不振など

慢性胃炎は、慢性的に胃に炎症ができる病気です。

ピロリ菌感染やストレス、暴飲暴食などが主な原因とされており、慢性胃炎になると消化不良を起こしてガスが溜まりやすくなり、ゲップやオナラが増えることがあります。

長期化すると胃の粘膜が萎縮して薄くなり、胃がんの発症リスクが高まります。

 

過敏性腸症候群(IBS)

【症状】

  • お腹の張り
  • 腹痛
  • 下痢
  • 便秘
  • めまい
  • 頭痛
  • 吐き気など

通常の検査で腸に問題が見つからないにもかかわらず、慢性的にお腹の張りや腹痛、便通異常などがある病気のことです。

腸の内臓神経が過敏になることで引き起こされ、神経質な人や真面目な性格の人ほど発症しやすいといわれています。

過敏性腸症候群(IBS)の人が、小腸で消化吸収がされにくい糖質を含む食品を摂取すると、お腹が張ったり、ガスがたまったり、下痢や便秘などの症状が出ることがあります。

そのため、IBSの治療法としてFODMAPを多く含む食品を避ける『低FODMAP食』が注目されています。

 

炎症性腸疾患

【症状】

  • お腹の張り
  • 腹痛
  • 下痢
  • 血便など

炎症性腸疾患はクローン病と潰瘍性大腸炎腸の2種類あり、免疫異常により腸に炎症が起こる病気です。

症状は良くなったり悪くなったりを繰り返す特徴があり、下痢や腹痛といった症状が強くなると食事や水分が不足しやすくなり、体重減少や低栄養状態を引き起こすこともあります。

 

小腸内細菌増殖症(SIBO)

【症状】

  • お腹の張り
  • ゲップ
  • 腹痛
  • 便秘
  • 下痢
  • 胃酸の逆流など

小腸内細菌増殖症(SIBO)は、小腸で腸内細菌が異常に増殖することで引き起こされる病気です。

何らかの原因で増えた腸内細菌は、食べ物をエサとして発酵し大量のガスを発生させます。

それにより、胃の圧迫や腸内環境の悪化によるさまざまな不調が引き起こされます。

SIBOの治療法としては、過敏性腸症候群(IBS)と同じく、FODMAPを多く含む食品を避ける『低FODMAP食』が注目されています。

 

機能性ディスペプシア(FD)

【症状】

  • お腹の張り
  • 胃の痛み
  • 胃もたれ
  • 胃のむかつき
  • 腹痛
  • 胸焼け
  • みぞおちの痛み(心窩部痛)など

病院で検査をしても異常がないにもかかわらず、慢性的に症状が現れる病気です。

機能性ディスペプシア(FD)の症状は大きく分けて、「食後愁訴症候群」と「心窩部痛症候群」があります。

 

【食後愁訴症候群】

食後すぐに症状が現れるのが特徴で、具体的には胃もたれや満腹感、ゲップ、吐き気などの症状が現れます。

 

【心窩部痛症候群】

食事に関係なく胸〜上腹部あたりに症状が現れるのが特徴で、胃痛、みぞおちの痛み(心窩部痛)、みぞおちの灼熱感などの症状が現れます。

 

FDの原因は、以下のようなものがあります。

  • 胃排出能の異常
  • 適応性弛緩の異常
  • 胃・腸の知覚過敏
  • 胃酸の過分泌
  • ストレス
  • 生活習慣の乱れ(アルコールや喫煙、睡眠不足など)
  • ピロリ菌感染
  • 感染性胃腸炎

発症の原因はひとつではなく、いくつかの原因が関わっていると考えられています。

 

腸閉塞

【症状】

  • お腹の張り
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 便秘
  • 下痢
  • 発熱など

さまざまな要因により腸内で食べ物や水分、ガスなどが詰まり、肛門側に移動できない通過障害が起こる病気です。

主な原因は、腹部手術後の癒着やヘルニア、腫瘍で、大腸の閉塞は大腸がんや便秘が原因となる場合があります。

腸がねじれていたり腸に一部が重なり合ったりして血流が悪くなっている場合、腸壁が壊死する恐れがあるため緊急での手術が必要です。

 

大腸がん

【症状】

  • お腹の張り
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 貧血
  • 嘔吐
  • 体重減少
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 血便
  • 便が細くなる
  • 残便感など

大腸がんは大腸にできる悪性の腫瘍で、大腸ポリープががん化して発生する場合と直接粘膜から発生する場合があります。

大腸がんの発症には生活習慣が大きく関わっており、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、アルコールの摂取などが発症リスクを高めるといわれています。

大腸がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、症状が現れたときには、すでに進行しているケースが多いです。

 

日常的なお腹のガス溜まりを解消するために気をつけたいこと

ここからは、お腹のガス溜まりを解消するために、日頃から気をつけたいことを紹介します。

 

悪玉菌を増やす食べ物を控える

動物性たんぱく質や脂質が多い食事、食品添加物が多く含まれる食品(ハムやベーコンなどの加工品・コンビニ弁当など)は、悪玉菌を増やす原因になります。

抗生物質は、細菌の増殖を抑える働きをする薬です。そのため、抗生物質を服用したり、抗生剤を投与されて育った食肉を食べたりすると、腸内細菌のバランスが乱れる可能性があります。

悪玉菌を増やす食べ物は控えて、善玉菌を増やし、腸内環境を整える作用のある食品を意識的にとりましょう。

 

<腸内環境を整える作用がある食品>

①プロバイオティクス

腸内フローラのバランスを改善し、宿主の健康に良い影響を与える生きた微生物(善玉菌)です。

乳酸菌、ビフィズス菌、麹菌、納豆菌、酪酸菌などが当てはまり、味噌、ヨーグルト、納豆、ぬか漬け、甘酒といった発酵食品に含まれています。

 

②プレバイオティクス

腸内の善玉菌のエサになり、善玉菌を育てる難消化性食品成分のことを指します。

食物繊維・レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)・オリゴ糖などが当てはまり、冷えたご飯、海藻類、根菜類、大豆食品などに含まれます。

ここで注意したいのが、腸内環境を整える作用がある食品が体質によってあわない人がいるということ。

先述したように、過敏性腸症候群(IBS)や小腸内細菌増殖症(SIBO)の人は、FODMAP(短鎖炭水化物)のような小腸内で分解・吸収がされにくい糖類を摂取すると、ガス溜まりやお腹の張り、下痢などの症状が現れる可能性が高いです。

お腹にガスが溜まる原因はさまざまなので、症状が続くようなら医師に相談するようにしましょう。

 

ゆっくりよく噛んで食事をする

早食いの人は、ゆっくりとよく噛んで食べるように意識すると飲み込む空気の量が減ってお腹にガスが溜まりにくくなります。

 

【早食いする人の主な特徴】

  • せっかち・短気な性格をしている
  • 仕事が忙しく食事時間が短い
  • 食事に執着がない

このようなタイプの人は、早食いをする傾向があります。

 

早食いをしないように、以下のような対策をしてみましょう。

  • 食材を大きめに切る
  • 噛みごたえのある食材を使う
  • 咀嚼中は箸を置き、飲み込んでから次の食べ物を口に入れる
  • 小さめのスプーンを使い、一度に口に入る量を減らす
  • 食べ物を口に入れたらしっかりと味わう
  • 食事時間に余裕をもつ

 

適度な運動で腸に刺激を与える

ガスが溜まってお腹が苦しいときは、適度な運動をして腸を刺激するのがおすすめです。

適度な運動はストレス解消や便秘改善にも役立ち、冷え性による腸の働きの低下を予防することもできます。

ウォーキングやヨガのような軽い運動を習慣にしたり、ガス抜きのストレッチやツボ押しを取り入れたりしてみましょう。

 

\ガス溜まり解消におすすめの運動やストレッチはこちら/

お腹の張り(腹部膨満感)の原因は何?痛みやガスを解消する方法を解説!

 

湯船に浸かってお腹を温める

ぬるめのお湯に浸かってお腹を温めると副交感神経が高まり、腸の働きを活発にしたりストレスを減らしたりする効果が期待できます。

お腹を温めることで胃腸の血流がよくなって消化活動が促されるため、便秘予防にもなります。

お風呂の温度は38〜40℃、入浴時間は15〜20分が目安です。

食事をした後に入浴すると消化不良を起こしやすくなるので、食後1時間以上空けてから入浴しましょう。

 

食後すぐに横にならない

食後すぐに横になると、食べたものが胃の入り口を塞いでゲップが出にくくなったり、胃酸が逆流してお腹の張りや胃もたれ、不快感といった不調が現れたりすることがあります。

また、食べてすぐに眠ってしまうと胃や腸の働きが低下して消化不良を起こしやすくなるので、食後すぐに横になったり眠ったりしないようにしましょう。

 

ゲップやオナラ、便意を我慢しない

ゲップやオナラを我慢すると腸内のガスが増え、腹痛やお腹の張りといった不調の原因になります。

また、便意を我慢すると便秘につながり、腸内環境が乱れてさらにガス溜まりがひどくなることがあります。

ゲップやオナラ、便意は我慢しないようにしましょう。

 

座りっぱなしを避ける

座っている時間が長いと、腸の働きが低下してガスが溜まりやすくなります。

デスクワークが多い・同じ姿勢でテレビやスマホを見ていることが多いという人は、30分〜1時間程度を目安に立ち上がって体を動かすようにしましょう。

 

まとめ

ガスが溜まってお腹が張るのは、腸内環境の乱れや腸の働きの低下、過剰に飲み込んだ空気が主な原因です。

ガスの発生と排出のバランスが乱れている状態なので、生活習慣や食生活を見直してガス溜まりを解消しましょう。

生活習慣や食生活を見直しても改善しない場合や食事を見直すことが難しい場合は、胃腸薬や整腸薬を服用することもひとつの方法です。

 

特に、ガスが溜まってお腹が張っている場合は、腸内に善玉菌を補い腸内細菌のバランスを整える整腸作用があるタイプが効果的です。

腸内環境の乱れを整えることで、ガス溜まりを始め、それに伴うお腹の張りやお腹の不調を解消できる可能性があります。

ただし、ガス溜まりは病気の症状として現れている場合もあります。

症状がなかなか改善しない場合や、お腹が張って苦しいときは、無理をせず早めに病院を受診しましょう。